会社を辞めて、FX一本で生きていく。

多くのトレーダーが一度は夢見る選択肢です。私もそうでした。そして実際に、その道を歩んだ人間です。

2024年2月、私はその専業トレーダーという生き方に終止符を打ちました。前年のドル円FXで1000万円以上の利益を出していたにもかかわらず、です。

なぜ稼げているのに辞めたのか。その答えが、FXで本当に勝ち続けるために必要なことの本質を突いていると、今は確信しています。

専業トレーダーの収入は、見た目の数字より遥かに少ない

2023年、私のドル円トレードの利益は1000万円を超えていました。

周囲から見れば、羨ましい数字かもしれません。

しかし実態は、その数字から想像するものとは大きくかけ離れていました。

会社員であれば、社会保険料の半分は会社が負担してくれます。専業になった途端、その負担は全額自分にのしかかってきます。国民年金、国民健康保険、住民税、所得税。これらを合計すると、思っていた以上の額が消えていきました。

負担はそればかりではありません。当然のことながら、生活費がかかります。

毎月の生活費は年間で約500万円分にもなり、積み上がり、私を苦しめました。

結果として残るのはわずかです。貯蓄もままならず、複利で資産を増やすという発想すら持てない状況でした。

ここで冷静に考えてみてください。専業FXで年収1000万円と、会社員で年収500万円。

税金や社会保険を加味した手取りで比較した時、その差は一般的なイメージよりずっと小さい。これが現実です。

ある夜、背筋が凍った

お金の問題だけではありませんでした。

当時の私は秒スキャをメインにしており、精神的な消耗は相当なものでした。家族との時間も削られ、心身ともにギリギリの状態で稼ぎ続けていました。それでも「専業である」というプライドが、やめる選択肢を遠ざけていました。

転機は、ある夜に訪れました。

チャートを眺めながら、ふとこんな考えが頭をよぎったのです。

「2023年のドル円は、歴史的な値動きをした年だった。こんな相場がずっと続くわけがない。もし環境が変わって稼げなくなったら、自分はどうなる?」

その瞬間、体が冷たくなる感覚がありました。

相場に生活を人質に取られている。稼げている今は良い。しかし貯金もできない状態で相場環境が変われば、生活が立ち行かなくなる。その焦りがより大きなリスクを取らせる。かつて株と為替で8000万円を失った時と、同じ螺旋を降り始めるかもしれない。

そう気づいた時、私は一歩を踏み出す決心をしました。迷いが消えたわけではありません。しかし、変えるなら今しかない、と。

兼業に戻って、トレードが変わった

専業を辞める決断は、正直なところ苦しいものでした。

負けて逃げたわけではない。そう言い聞かせても、長年の自由な生活を手放す喪失感は消えませんでした。

しかし兼業に戻って数ヶ月が経つ頃、あることに気づきました。トレードの質が、明らかに安定し始めていたのです。

変化の理由は明確でした。

まず、稼がなければという強迫観念がなくなりました。会社からの給与があることで、トレードの損失が即座に生活を脅かすことはなくなります。この安心感が、判断を冷静にしました。

次に、チャートを見る時間が自然と制限されました。専業時代は常にモニターの前にいられる環境が、逆にポジポジ病を生み出していました。限られた時間の中でしかトレードできないことが、本当に優位性のある場面だけを狙う習慣を作りました。

そして、撤退の判断が早くなりました。含み損を抱えたまま翌日の仕事に向かうわけにはいきません。損切りの決断が、自然と速くなりました。

結果として、2024年から2025年にかけて月別の収支は一度もマイナスになっていません。2025年には月100万円を超える月も複数出てきました。専業として必死に稼いでいた頃より、兼業として淡々とトレードしている今の方が、安定した結果が出ています。

以下は実際の成績の一部です。

負けた日はあります。それでも月単位では必ずプラスで終わる。これが設計の力です。

環境を変えるだけでは、まだ足りなかった

兼業に戻ることで、トレードを取り巻く環境は整いました。しかしそれだけでは、まだ不完全でした。

どれだけ冷静な環境にいても、人間の脳は必ず感情に支配される瞬間があります。連敗が続けばリベンジしたくなる。大きく動く相場を前にロットを上げたくなる。損切りラインを前に躊躇する。

これらは専業か兼業かに関係なく、人間である限り発動し続けるプログラムです。

私が最終的に取り組んだのは、こうした感情が入り込む余地を物理的に消す「設計」を作ることでした。

逆指値の強制発動、一日の最大損失額のロック、エントリー回数の上限設定、証拠金の分離管理。意志で感情を抑えるのではなく、感情が暴走できない構造を先に組み込む。

この発想の転換が、決定的な違いを生みました。

おわりに

2024年2月に専業を諦めた決断を、今も後悔したことは一度もありません。

稼ぐことに必死だった時期より、執着を手放した今の方が結果が出ています。勝つために必要だったのは優れた手法でも強靭なメンタルでもなく、負ける構造を一つずつ取り除いていくことでした。

専業への憧れと現実の間で迷っている方へ。どれだけ努力しても収支が安定しないと感じている方へ。

答えは手法の中にはありません。設計の中にあります。

8000万円の損失と引き換えに辿り着いたその設計図を、以下にまとめています。

コツコツドカンから逃れられない方へ:月間利益を守れない人のための設計書